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居抜き店舗コラム

飲食店 閉店時になぜ 原状回復工事 が必要なのか

skeeze / Pixabay

 

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飲食店 閉店時になぜ 原状回復工事 が必用なのか

 

飲食店をはじめようと物件が決まり賃貸借契約を交わす際によもや解約する時のことを想像する方はいらっしゃらないでしょう。自然と契約書の内容は営業時間の制限や工事をする際の届け出などスタート時の制約に関心が向くのに対し、契約の解約手続きや借りた物件を大家さんに部屋を返す時の取り決めはまったく関心がないという方がほとんどではないでしょうか。

賃貸物件を仲介する不動産会社は、法律で決められた内容を借主に対し重要事項説明書という書面を交付し説明する義務を負います。その関係で契約を解約する際の説明も行うのですが、こと解約に関する内容にふれると縁起でもないと怒られることせあります。

これからお店を始めるにあたり意気揚々と契約に望まれる気持ちはよく理解できるのですが、いざ解約という段になってその内容を冷静に考え、最初に理解していればその物件は借りなかったというケースは数知れずあったことでしょう。その中でも一番もめるのがこの原状回復に関する項目です。しっかりとした知識をもった上で契約に望んで頂きたいと思います。

事業用と居住用で大きな違い

 

当たり前ですが飲食店舗はお金を稼ぐ為に借りるわけですから事業用の賃貸借契約です。これに対しマンションやアパートなどは住む為の賃貸借契約ですのでこちらは居住用となります。どちらも契約書には原状回復義務がうたわれているのですが、考え方に大きな違いがありますので混同しないようにしっかりと整理しましょう。

 

居住用

 

退去時に借主負担で畳表の交換、襖の張り替え、壁紙を張り替えだとかいくら契約書に書いてあっても、借手が誤って畳を焦がしてしまったり、襖を破いてしまったり、壁に棚やポスターを張った関係で壁紙が痛んでしまった場合以外は通常損耗、経年劣化と言って借主が負担しなくてもよいと考えられています。なぜなら「大家さんは貸せば当然に汚れたり時間と共に劣化することを承知で貸している」と考えられているからで民法でも原状回復を損耗以前の状態に戻せとまでは言っていません。

その根本にあるのが、そもそも人が住み暮らすという行為は人により大きな差異が生じないというものです。つまり借りた人ごとに特別な使用方法はしないと考えられています。

 

事業用(飲食店舗)

 

賃貸スペースを使い収益事業をする事業用賃貸借物件はたとえ物販店であれ飲食店であれその事業(商売)に沿った内容の造作や内装を作り込みます。飲食店一つとっても簡素なものもあれば宮殿を思わせるような豪華なものまで様々です。つまり居住用が人により大差ない利用方法であるのに対し事業用は全てが異なる使い方であると解釈されています。

民法598条で定める、

 「借主は、借用物を原状に復して、これに附属させた物を収去することが出来る」

に従い原状回復義務を負うこととなるのです。

 

つまり、事業用賃貸借の原状回復工事については居住用に関する原状回復工事の記事やコラムをいくら読んでも間違った知識を入れるばかりで全く役にたたないと言うことです。

 

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事業用原状回復工事のトラブル

 

注意点1.原状とは必ずしも引き渡された時の状態とは限らない

 

一番トラブルが多いのがこの「原状」を巡るトラブルです。

  1. 引き渡し時スケルトン状態(床、壁、天井すべて仕上材が施行されていない下地が剥き出しの状態)で借受けたため、返す時もスケルトン状態にすればいいと考えていたところ、もともと事務所として大家さんは貸していた物件だったらしく原状回復工事の仕上げは「事務所仕上げ」と契約書に書かれていたようです。スケルトン工事でさえ多額のお金がかかるのに床、壁、天井を仕上げて電灯設備までつけるとなると相当な工事代金となります。結局話し合いの上事務所仕上げ費は大家さんと折半したようです
  2. 引渡時に飲食店舗として作られた内装、厨房(防水工事)などが残されていた賃貸物件を借りたのですが、自分が解約する時も原状回復をしなくていいのだと思い込んでいたところいざ解約の時になって大家さんからスケルトン状態への原状回復工事を要求されることとなったのです。借主は、引き渡し時が原状ではないのかと主張をするのですが、大家さん曰く、「たまたま残置されていた飲食店用の内装や厨房設備を引き継いだだけで、他人がつくりつけた物も引き継いだ人が原状回復をするのは当たり前」と言われて泣く泣く原状回復工事をしたと言います。

注意点2.原状回復工事は誰がやるのか

原状回復の工事業者を大家さんや管理会社が指定する場合があります。いわゆる指定業者と言うものです。以下の様な苦情を耳にします。オフィスビルやショッピングセンター(SC)などに入居した際によく聞く話ですが、概ね以下の通りです。

  • 解約予告期間内に工事が終了するように期間を決める
  • 土日や深夜にしか工事をさせないと言われ工事期間が長くなった
  • 養生費や管理会社の監理料などが含まれており本体工事が高額となる
  • 自分の知っている工事業者でやりたいとお願いしたら、実績がないと言われ断られた

この手の話は、個人の事業用物件を借りた場合でも管理会社が建築部門を持ってるケースや、建物を施工した建築会社が管理をしている場合に頻発するようです。

賢い原状回復工事対策とは

 

その1.特約事項を入れてもらう

 

契約書の中には必ず原状回復条項が含まれています。この条項に対して例外となるケースを想定して文言を追加してもらうのです。

 例「甲(大家さん)が認めた場合はその限りではない」

つまり大家さんがいいと認めてくれれば原状回復工事をしなくていいよと言うものです。もちろんそれにはいくつかの条件が付くでしょう。次に借りる方が同じ様な飲食店を営業される場合や大家さんが許可した業種などという制約です。

自分で次の借手を見つけて大家さんに相談する場合に有効です。もっとも契約段階でこの文言を入れてくれる大家さんなら交渉もしやすいと思って間違いないでしょう。

 

その2.普段からのコミュニケーション

 

大家さんとのコミュニケーションは非常に重要です。契約時にお会いしたことがなくても暑中見舞いや年賀状といった季節のご挨拶はもちろんのこと、例えば新しいメニューが出来たので是非ご賞味くださいとご招待のお手紙を折に触れて出し続ければ、いずれご来店くださりよいお付き合いが始まるものです。

この絆が最後お別れする時に強い味方になってくれます。もちろんそれが目的でのお付き合いを進めるのではありません。結果として有効であると申し上げているだけです。

 

ここ2000年移行で急速に伸びてきた居抜き店舗と呼ばれる原状回復工事前の物件、全て同じルールでマーケットに出ている訳ではありません。大家さんから承諾を得ていないものもあれば、大家さんの意向を無視して価格設定されているものなど様々です。

借りる側からすれば、いい場所に、内装のきれいな、家賃の安い物件があれば大抵のことは目をつむると言われるかもしれませんが、10年先、15年先に解約する日は必ずやってきます。ほとんどの方がその時考えればいいと思われるようですが、原状回復工事に関する取り決めこそ入口の契約段階で紙に残しておかないと言った言わないの争いになりまねません。

契約締結をする際には必ず「原状とは何ですか?」と聞きましょう。それがすべてのスタートです。

 

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