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居抜き店舗コラム

飲食店閉店の売却はこうやって決まる

Photo credit: asirap via Visual Hunt / CC BY-NC-SA Photo credit: asirap via Visual Hunt / CC BY-NC-SA

まとめ―Summary―

  • 飲食店舗の売却価格、主要な要素は「立地」「規模(部屋型)」「清潔感」の3つ
  • 10~25坪ぐらいの店舗を求める人たちが出せる金額に、居抜き店舗の売却価格が近づいている。
  • 一般的に売却物件の相場は、100万円~250万円ぐらい
  • 低金利が続く間は飲食店舗の売却価格はそうは下がらない

Contents

居抜き店舗 売買相場とお店売却方法

飲食店を経営なさっている方は、ご自身のお店にどれほどの価値があるのかを知りたいと思われるようです。また、どのようにして飲食店の価格が決まっていくのか、よくご質問を頂くところです。

これまで、あまり語られてこなかった飲食店の居抜き店舗物件売却相場について、そのメカニズムに迫りたいと思います。

売却価格を構成するもの

ひと口に「居抜き店舗売買」と言っても、いくつものパターンが存在します。

すぐにでもお店が開ける状態の物件でも、開店後数か月というものもあれば、10年以上営業をした物件や、既に閉店して厨房機器などがない物件もあります。

また、明け渡しの状態も様々です。年数が経っていても、毎日スチームで床清掃を欠かさなかったお店もあれば、一度も掃除をしたことがなく、厨房機器の隙間などいたるところにゴキブリの死骸が放置されているものまであります。

つまり、1つとして同じものは存在せず、営業してきた業種、営業年数、店舗の大きさ、厨房設備などまさに千差万別です。

この規格ものでない、全てがワンオフの居抜き飲食店舗物件では、どのようなプロセスを経て売却価格が決定されるのでしょうか。

スケルトン(床、壁、天井、電気・給排水設備の無い躯体がむき出しになった状態)で借りて、一から工事代金1,000万円~2,000万円かけて造作を施したお店だと、営業年数にかかわりなく、数百万円の売値を希望されるケースがよくあります。しかし、これは後ほどお話しする「好立地パターン」を除けば、まず売却不可能もしくは売却までに相当な期間を要することとなります。

では、飲食店舗の売却価格は何によって構成されているのでしょうか。

主要な要素は3つ。

  • 立地
  • 規模(部屋型)
  • 清潔感

飲食店閉店の造作を10日で売る仕組み

「何だ、厨房機器や内装に値段がつくのではないのか」と言われそうですが、それらは確かに価格を決める要素の1つではありますが、価格を大きく左右するものではありません。

 

やはり飲食店をやっていく上で、立地は最大の要因となります。

ナショナルチェーンが「駅前立地にどうしてもお店を出したい」というとき、20坪ほどの飲食店に1,000万円近い買取り金額を提示することがあります。賃料を吊り上げて借りるとランニングコストがアップして店の経営に直接響きますが、居抜き店舗の造作代として支出した金額はお店を作る内装費のようなものですから帳簿上は資産として残せるため、高額なお金が出せるという仕組みです。つまり、その場所が欲しい人が多いほど飲食店の売却価格は高くなるのです。売却価格が高額でも売れるケースは大抵この好立地パターンです。

 

次に規模です。個人の方で30坪や40坪といったサイズのお店を始める方は少数派だと思います。ご自身が厨房に立たれるのであれば、アルバイトを1~2人雇ってもせいぜい10坪から15坪程度が店を回せる規模ではないかと思います。事実、このサイズの需要が一番あります。

また、同じ大きさでも部屋の形の良し悪しが売却価格に影響してきます。変則的な形だと、思うように席数が取れないことがあります。規模が小さいだけに1席、2席が増えるか増えないかは死活問題です。例えば、間口が狭くて奥に長い部屋型よりは、間口の広い物件の方が好まれる分値段も高くなります。

 

3つめは清潔感です。少々あいまいな表現に聞こえるかもしれませんが、お店をこれから開こうと思っている方にとって、最初のイメージは大変重要です。

10年以上営業してこられたお店でも、毎日客席や厨房を磨き、掃除をしてこられたお店は古さを全く感じさせないものです。そんなお店をいくつも見てきましたが、やはり早く、あまり値下げ交渉も入らないまま商談が成立していきます。

売却価格の相場は

飲食店舗の売却価格が、内装や厨房機器の値段だけで決まるものではないことをご理解いただけたと思います。さて、次はその価格決定の要素を考えてみます。

飲食店舗の居抜きと呼ばれるスタイルが、今ほどポピュラーでなかった2010年前後は、物件も少なくマーケットは今と違い売り手市場でした。買い手の方もスケルトンから造ること考えると半額で収まるならと、20坪前後のお店に400万、500万円というお金を払ったものです。

その後、居抜き物件情報が世の中に出回るようになり、居抜き物件を紹介する専門のポータルサイトや、居抜き店舗を専業にする不動産会社が増えるにつれ、徐々にその価格は下がってきました。

では、現在の店舗売却の相場はどのようにして作られているのでしょうか。

実は、自己資金や借入金額と密接な関係にあります。

初めて飲食店で独立、開業をされる方の平均的な開業予算は500万円~600万円が一般的です。ではその中身を見てみましょう。

<シミュレーション>

開業予算:500万円~600万円
物件条件:20坪、賃料20万円/月

・敷 金 120万円

・礼 金  40万円

・手数料  20万円

・運転資金100万円

・改装費 100万円

合 計 380万円  残額120万円~220万円

残額に相当するのが店舗を買い入れる金額となります。

都内飲食店で一番物件数が多いのが10坪前後から25坪ぐらいまでです。このサイズを求める人たちが出せる金額にマーケットに出てくる居抜き店舗の売却価格が近づいてきたと考えるのが自然です。

一般的に売却物件の相場は、100万円~250万円ぐらいと言えるでしょう。その価格を左右するのが立地であり、規模であり、見た目の清潔感なのです。

 

今後の売却相場について

日銀のマイナス金利の継続が決まりました。これにより、金融機関は集めた預金を日銀に預ける際にお金を取られてしまうことになります。つまり、何らかの方法で運用しないと銀行はジリ貧となるのです。

金融機関の中でほぼ唯一、開業前にお金を貸してくれる日本政策金融公庫も同様で、予算を事業活性化、景気浮揚の為に貸し付けなければ存在意義が問われることとなっています。これまで自己資金の額や保証人の有無など厳しく制限してきた公庫も、今や貸付額の1割の自己資金で融資してくれるようになりました。3のシミュレーションで、開業予算が500万円だとしても、50万円手元にあれば450万円まで借り入れることが可能です。借入金利も2%程度ですので年間9万円程度です。

カードローンが、所得証明なしでも300万円まで借りられますと宣伝しているのと同様に、300万円までの融資は各支店で決済できるので比較的楽に借りられるようです。

つまり、低金利が続く間は飲食店舗の売却価格はそうは下がらないでしょう。逆に、金利が上昇して独立、開業をする人が借入額を抑えるようになると、売却額は下がるものと思われます。

売るにしても買うにしても、双方にとってよい環境が当分続くと思われます。