以前食べたあの味が忘れられずに、せっかく近くまで来たのだからとお店を訪ねてみると閉店していたという経験ありませんか。いつもお客様が入っていたのになぜ閉めたかと思いを巡らすこともあるでしょう。
真っ先に経営不振かと思い浮かべる方が多いと思うのんですが、飲食店の閉店理由とは簡単なものではありません。突然の病や経営者の葛藤のすえに下される決断なのです。
今回は、実際にあった3つの閉店事例から、もうお店を諦めるしかないと決断したその時を見たいと思います。
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飲食店閉店を決意した瞬間1:最初から資金繰りに苦しんだご夫婦
立地は、とある駅前ビルの2階、スケルトンから造り込んだダイニングバーです。夜早い時間には食事とお酒がメイン、遅い時間はほぼお酒だけのBarになるお店です。
当初はご夫婦のうちご主人がメインでお店を切り盛りする計画でスタートしましたが、奥様もオープンに合わせてそれまでのお勤めを辞め一緒にお店に立つことになりました。
お店は、駅から徒歩1分という好立地、視認性もよく当初から十分な集客を見込んでいたのですが、蓋を開けてみるとカウンター13席だけのお店がいっぱいになることはなく特別な宣伝活動もしないまま約半年が過ぎていきました。
運転資金を毎月食い潰す形でお店を続けてもダメになることは目に見えていると悟ったご夫婦が選択したのは、もう一度奥様が働きに出て赤字分を補てんするという決断でした。
もっとも、ただ補てんをするだけではなくもう一つ決断をされたことがあります。もしこのお店の造作設備が希望の金額で売れるのであれば手放そうというものです。
正直に申し上げて10坪程のダイニングには高すぎる値段設定となっていますが、買ってくれる方が現れるまではお二人で頑張るとおしゃっていました。
皮肉なことに、閉店という新しい目標が見つかってそれまでの閉塞感から解き放たれたような笑顔が印象的でした。
飲食店閉店を決意した瞬間2: 店主の認知症が進んだ結果
長年フランチャイズ店として暖簾を守ってこられたご主人、実年齢より若く見えることから傍目には病魔に蝕まれているなど微塵も感じられません。異変に気づいたのは、店舗が入居している不動産を管理する不動産会社の社長さんでした。
二人は幼馴染でもあり、お互いの店舗がすぐ近くということもありで、毎晩のようにお店で会っていたそうです。
ある時ネタケースに作り置きしてある鳥串をまだ早い時間にも拘わらずご主人が片付け始めたのでおかしいなと思い声をかけたそうです。
その時は時間を勘違いしていたと笑っていたそうですが、注文を間違えたり、同じ話を何度も繰り返す様子がだんだんと増え始めたので、ある時アルバイトをつかまえてご主人の普段の様子を聞き出したのでした。
最初は言いにくそうにしていたそのアルバイトは驚きの話をしてくれたそうです。
お店を開く前に、仕込んであった料理を捨ててしまうことがあったり、材料の発注を間違えて同じものが重複して届いたり、材料が途中で足りなかったりといったことがここ最近何度かあったと言います。
心配をした不動産会社の社長はひざ詰めでご主人と話をして病院の診察を受けることを薦めたそうです。結果はすぐにわかり認知症の進行が認められるというものでした。
このままお店を続けてもし火の扱いを間違えでもしたら大変なことになると考え社長はご主人に引退を決意させたのです。
実際にお会いした印象は、認知症など嘘ではないのかと思えるほどしっかりと受け答えが出来ていましたし、そのような素振りはみじんも感じられませんでした。
これに対し不動産会社の社長曰く、日によって症状にムラがあり、今日みたいな日があったかと思えば、全く話が通じない日もありだんだんとその間隔が短くなっていると話されていたのが印象的でした。
飲食店閉店を決意した瞬間3: 売上不振の末
一口に営業不振と申し上げても程度問題があります。季節や天候、イベントのある月などによりお客様の入りは変わります。売れる内容も変わります。
そこに持ってきて、仕入れの材料費の価格の変動が利益に大きく関わってきますから飲食店の経営は常に波のある状態で進むことになります。だから一度も黒字になることなく閉店する飲食店というのも逆に少ないように思います。
材料費、人件費、賃料などを支払っていかなければそもそも飲食店は続けていけません。その資金がついえたところで閉店となるのですが、ことはそんなに単純ではありません。なかにはこんな経営者の方がおられました。
昼はラーメン専門店、夜はラーメンバルとしてオープンしたお店でした。昼は行列が出来るほどですが、夜が思った程お客さんが来られなかったようです。赤字になる月と黒字になる月をくり返しながら1年が経った頃にある結論に達したのでした。
毎日毎日お客様が来店され、一生懸命料理を作っても思うようにお金が残らないというジレンマの日々を続けた結果心が折れてしまったと。
結局、お店は人に譲り、ご自身はチェーン店に就職されました。3年程今の雇われ店長でお金を溜めて次は別の業態でチャレンジをすると宣言されていました。
~まとめ~
飲食店の閉店理由は、ご自身の病気や親の介護、設備の更新費用の問題などハッキリとした問題が持ち上がってお店を閉店されることが多いのですが、日々疑問を感じながら、現実と向き合い悩んだ末に閉店を決意される経営者の方も数多くいらっしゃいます。
今回ご紹介した3組の経営者の内2組は前向きな閉店と見ることが出来ます。事態が取り返しのつかなくなる前に再起を目指し決断された点は見習うべきところではないでしょうか。
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