Summaryーまとめー
- サブリース契約とはなにか
- 問題となっているサブリース契約とは
- 飲食店のサブリース契約はどうか
- 二つのサブリース契約
2018年に社会問題となったサブリース契約。その形態をめぐり、大手地銀を巻き込んだスキャンダルに発展したのでした。
このことが令和の時代に入った今でも中身の詳細を見なければ、サブリース契約は注意が必用だと無用な心配を掻き立てています。
店サポ読者の中にも少なからず疑問を持てらっしゃる方がおられることと思います。今回は世間でいわれるような誤解を晴らしておきたいと思います。
Contents
サブリース契約とはなにか
そもそもサブリースという言葉自体が日本で作られた造語なのです。
1980年代、土地の高騰によりオフィスビルなどの開発業が進まなかった時代に、土地活用を促す仕掛けの一つとして考えだされたものです。
具体的に見てみましょう。
高層ビルやマンションが建築可能なエリアで、土地を手放さがらない地主さんに対し、大手のデベロッパーは相続税対策として高層ビルや高層マンション建築を持ちかけました。
そこでわかってきたのが、地主さんの一番の心配事は、安定した家賃収入が入ってくるかどうかだったのです。
安定収入が入ってくれば、建築後の何十年にも及ぶ返済と月々の生活費を心配することは無くなります。そこで考え出されたのが、デベロッパーによる一棟借上げつまり家賃保証をするという契約です。
その時代、不動産マーケットで取引される賃料の80%~90%の額が借上額として保証されていました。この大家さんとデベロッパーの契約をマスターリース契約とかヘッドリース契約と呼びます。
これに対し、今度はデベロッパーが貸主となり、実際に入居するテナントと結ぶ転貸借契約を先のマスターリース契約に対してサブリース契約と名付けたのです。
問題となっているサブリース契約を解説
問題となったトラブルの舞台はシェアハウス一棟のサブリース契約です。登場関係者は主に3者。
- シェアハウスの一棟販売と家賃保証をするサブリース会社
- シェアハウス1棟をローンで購入し家賃をえる投資家
- シェアハウスの投資家に購入資金を融資をする銀行
問題となっているスキームは今に始まったことではなく以前から存在したものです。大東建託、レオパレス21などの大手も同様のやり方で大きくなっています。では何がちがうのでしょうか。ポイントは大きく2つ。
- 自己資金が足りない投資家に過剰な融資をした(と伝えられている)
- シェアハウス販売及びサブリース業者が家賃保証に耐えられなくなった(保証賃料の不払い)
報道されている内容を基に問題点を整理します
シェアハウスサブリース業者は家賃保証を口実に自分たちが開発した投資用アパートを投資家に販売したのですが、そもそもの問題が、数千万円も借りられなかった投資家に1億円とも言われる融資がついたことだといわれています。
投資の仕組みとして、収入となる保証賃料を高めに設定すれば、期待利回りから逆算して投資用のシェアハウス価格は実際より高い金額で販売されることになります。
この時点で販売及びサブリース業者は多額の利益を得ることになります。仮にその高い賃料を2年程度保証したとしても売買価格から得られる利益が少々少なくなるだけで痛くもかゆくもありません。その後入居者が集まらないことを理由に保証賃料を下げれば損はでない仕組みです。
このスキームでは、投資家に販売する投資用シェアハウスの数が多ければ、高い保証賃料はたとえ入居者が少なくても払えるはずでしたが、何らかの理由で破綻をきたし、投資家に家賃が保証できなくなった為に問題点が露見したと言うことです。
このスキームでは、投資家=大家さんが被害者となります。サブリースで大家さんに家賃が払えないことが問題ではありますが、そもそも投資家はそのリスクを分かっていて陥った悲劇でもあります。
そのことがあまり報じられないことがサブリースに対する風評被害を大きくすることとなったのです。
飲食店舗サブリース契約とはどこが違うのか
先程のシェアハウスサブリースと飲食店舗サブリースの一番の違いは、投資家も銀行も登場しないところです。また、サブリースを前提に、不動産の販売をするものでもありません。あくまでも賃貸借契約上の権利関係のみです。
飲食店舗サブリース契約は以下の様に整理できます。
建物所有者=大家さんから転貸を承諾するマスターリース契約を飲食店舗サブリース事業者は締結します。
先程のシェアハウスサブリース事業者と違い、立場的には大家さんの方に主導権があります。何故なら貸し手市場だからです。投資スキームに異議を唱えられない投資家の大家さんとは真逆の立場です。
そもそも、サブリース=転貸の承諾ありきの投資案件と違い、飲食店の転貸承諾は建物所有者である大家さんに判断の権限があります。
飲食店舗のサブリース会社は勝手に転貸などすることは不可能です。仮に、飲食店のサブリース業者が今回問題となっているアパートサブリース業者のように賃料の不払いをしたとしても、飲食店舗サブリースの場合、実際にお店を使用しているサブリース先である転借人から賃料を直接請求できますので問題が大きくなることはありません。
二つのサブリース契約
同じ大家さんでも、建物を所有する大家さんと購入金額の大半を銀行借り入れで賄う投資家大家さんではまったく比較対象にならないことがお分かり頂けたと思います。
またサブリース契約が果たす役割でも、飲食店のサブリースは、
- 賃料保証
- 家賃の収納代行
- トラブル処理
など大家さんに対する実務が中心となっているのに対し、シェアハウスサブリースは投資家をあざむく舞台装置として利用されています。
どうかこの違いを一人でも多くの大家さんにご理解いただき風評被害の早期解決、サブリース事業の信用向上に繋がればと感じています。
~まとめ~
賃貸マンションの分野では大手のサブリース業者が何社も活躍しています。近年、相続税対策でマンションを建設なさる地主さんにとっては一般的な手法として確立されています。
そんな中でも、1階だけが店舗仕様となっているような場合、住居部分はサブリース対象となっても店舗部分は除外されることが多く、飲食店舗のサブリースが大手でも苦戦する様子が垣間見えます。
逆の言い方をすれば、飲食店舗のサブリース契約が出来る業者はかなり専門性が高い会社であるとの証明でもあるのです。